アメフトと英語

アメフトと英語の話がでて、ふと大学留学時代を思い出してしまいました。当時はどうトチ狂ったか放送の勉強がしたいと強く思い、アメリカ南部のアラバマ州、Jacksonvilleという町の大学でコミュニケーション学部に行きました。ようは放送関係のことを勉強するのですが、やっていることはほとんど専門学校みたいなもので、TVのカメラ操作から放送工学的なことまで、まあいろいろと勉強しました。その中で、地元の高校生のフットボールの試合を土曜日に収録し、日曜の地元ケーブル放送向けに編集するというプロジェクトがあり、ろくに英語もわからないのに無理やり参加させてもらっていました。もちろん課外学習的な要素があるのでスタッフはほとんど学生です。
ある日、初めてカメラをやらせてもらえたときのこと。全部で4台のカメラで収録しますが、無線のヘッドセットでディレクターの指示を聞きながらカメラを向けるわけですが、ある時、突然、Get the black!との指示が飛んできました。南部ですから、なおさらのことBlackといえば黒人のこと。「いったいなんでそんなの撮るの?」と大いなる疑問を抱えながらも、カメラをフィールドから一転させ、観客席に向けて黒人の観客集団を探してフォーカスを向けました。ヘッドセットからはもちろん「何やってんだ!」と激怒されます。瞬時に指示は同じようにスタンド中段にいた別のカメラに移りましたが、そのフォーカス先を見て唖然としてしまいました。
「うわっ、そういうことだったの・・・」
当時はカメラも古く、日立製のTVカメラのファインダーは白黒。フットボールはホームとアウェーのチームで薄い色のユニフォームと濃い色のユニフォームに分かれます。白黒のファインダーではそれはすべて白と黒。そこで白というのはホーム、黒はアウェーという、カメラマンの事情に合わせた表現だったんですね。もちろんみなすべて実践で学ぶわけで、「きいちゃいないよ!」とキレる必要もなかったのですが、まあ言葉ができないつらさに泣かされた場面でしたね、あれは。このときからまもなくシーズンが終わったので、これ以降カメラを担当する機会はなかったのですが・・・。
カメラマンでさえこんなわけですから、選手にいたっては、あの複雑怪奇なスポーツを英語でやるなんて、もっと大変でしょう。木村選手の苦労もよ〜くわかりますよ。