ITカタカナ語を清める:『小坂リポート』の企み

ITカタカナ語が危ない!

私は常々ITカタカナ語に不安を抱いてまいりました。そして、それを垣間見る報告に直面したのです。その問題とは、ズバリ、語末長音のことです。

みなさん、IT業界の方なら誰でもご存知のとおり、ITカタカナ語は語末長音を省くのが慣用となっています。コンピューターではなく、コンピュータ。ユーザーではなく、ユーザ、のようにです。以前ローカリ翻訳のときに知ったのですが、どうやらこれをはじめたのはマイクロソフトのローカリ部だったようです。(事実確認はしてませんので、あしからず)想像するに、バイト数削減とか読みやすさ向上のためにやったのが、そのまま定着し、ほとんどといっていいくらい、語末長音をとるのが規範となっています。

ただ、この規範を知っている人は、「ユーザ」とあっても、必ず「ユーザー」と発音するのは常識なわけです。しかし、ここで問題が発生します。そしてその問題は例によって小学校教育の中ですでに発生していたのです。

私の妻は息子の通う学校でPTA役員をやろうというくらい、学校教育に関心を持ち、平均的な父兄からすると、頻繁に学校や教室に出入りしています。とある学校見学会の日、例によって妻がある授業を見学していると、その日は児童による発表会がおこなわれていました。ある児童の発表を聞くうちに、ふとある繰り返される意味不明の単語に気づいたそうです。それは、

「ユウザ」

というものでした。妻はそれでも辛抱強く、その「ユウザ」を聞き流し、全体のコンテクストから、その単語が何かを推測しようとしたそうです。そして、10回ほど聴いてからでしょうか、それが「ユウザ」ではなく、いわゆる「ユーザー」であることに気づきました。

まず英語がある。それをカタカナ語にするのだが、その際、できる限り、英語の発音に近い形で置き換える。これがカタカナ語をつくりだす規則となっています。ところが、何を血迷ったか、この一般規則を無視して、語末長音を省いてしまった。耳から入っているエンジニアにとっては何の問題もない。ところが、見た目の字、つまり書き言葉(いわゆる、文字)から入る人にとって、なんだこの「ユウザ」とは、となる。ここで「ユウザ」と表記しているのは、アクセントが「ユ」にあることは察しのよい方だったらお気づきのはず。アクセントに関連して「ユーザ」の問題は、奥深く、「ユーザー」のアクセントが「ザー」にあるのですが、「ユーザ」だとアクセントを「ザー」に置きようがない点です。

とにかく、語末長音を省く、という規範は、問題を招く。そして、その問題は小学校レベルで発生するのだ、ということに気づきました。だから、『小坂レポート』(もちろん、私の苗字)と称して、この問題をとりあげ、関係者に配布しようと思いついたわけなのです。

これって、環境ホルモン以来の問題になりそうじゃありませんか?各家庭で捨てていたゴミこそが最大の環境汚染だった!!! 語末長音がこれからの問題になるなんて、誰も想像していませんでしたよ!